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「ゲシュタルト崩壊」という言葉がある。
同じものを細かく見続けるうちに、全体が見えなくなってしまう現象だ。

実は、恋愛でも同じことが起きている。

彼から返信が来なくなると、
 あのLINEが悪かったのかな
 既読を付けるのが早すぎたかな
などと、一つひとつの出来事ばかり分析し始める。

だが、その瞬間、関係全体が見えなくなっている。

まさに恋愛におけるゲシュタルト崩壊である。

ゲシュタルト心理学というものがある。
ゲシュタルトとは、「まとまり」や「全体」という意味だ。

例えば、
 点が並んでいるだけなのに、円に見える。
 顔を認識するとき、目、口、鼻を一つひとつ確認して「顔だ」と判断するのではなく、瞬時に統合して「顔だ」と認識する。

このように、人は全体像から瞬時に意味を理解する能力がある。

ゲシュタルト心理学の要点は、
人はバラバラの出来事を一つの意味ある全体として統合する能力を持っているということだ。

この考え方を、恋愛に置き換えながら見ていこう。

ゲシュタルト心理学の影響を受けたゲシュタルト療法では、

「ゲシュタルトが開いている」
「ゲシュタルトが閉じる」

という考え方をする。

どういうことかというと

その問題について、
 まだ意味づけが終わっていない状態=ゲシュタルトが開いている
 一つの意味が与えられ、理解した状態=ゲシュタルトが閉じる

と考えるのだ。

彼から連絡が来ないとき、頭の中には
 なんで?
 他に好きな人ができた?
 忙しいだけ?
という問いが次々に生まれる。

しかし、答えが出ないため、脳はその問題を「未解決」と判断し、考え続ける。

これが
まだ意味づけが終わっていない=ゲシュタルトが開いている
という状態なのである。

「彼は悪い人だった」でもなく、
「私が悪かった」でもなく、
「あの関係には、あの時点で限界があった」というように、

問題に一つの意味が与えられ、それまで点として存在していた出来事が、一つの物語として統合される瞬間がある。

すると、脳は「この問題は終わった」と認識し、執着が急激に弱くなることがある。

これが、
一つの意味が与えられ、理解した=ゲシュタルトが閉じる
という状態である。

ゲシュタルト療法では未完了の課題という概念がある。

例えば
 言えなかった言葉
 表現できなかった怒り
 泣けなかった悲しみ
こういう未完了の感情は心の中で「開いたゲシュタルト」として残り続ける。

そのため
 同じ恋愛を繰り返す
 元恋人を忘れられない
といった現象が起こってしまう。

「未完了の感情を完了させる」という目的で、出さない手紙を書くなど、さまざまなワーク的手法がある。
ワークはゲシュタルトを閉じることに役立つ。

だが今回はワークとは別のアプローチを紹介する。

ゲシュタルトを閉じることが得意な人は、出来事ではなく構造を見れている。
共通パターンや因果関係を見抜くことが得意なのである。

例えば、彼にブロックされたとき、人はその出来事そのものに目を奪われる。

 既読無視された。
 ブロックされた。
 誕生日に連絡がなかった。

これらを独立した事件として見ると、理由はいくらでも考えられてしまう。

しかしそうではなく、
少し距離を置いて関係全体を見ると、別のものが見えてくる。

例えば、

彼は付き合った頃から、仕事が忙しくなると人との連絡を減らす人だった。
私は不安になるたびに確認を求め、そのたびに彼は少し距離を置いていた。

こうした「いつものパターン」が見えてくると、その出来事を貫いている共通の流れが見えてくる。

だからその「いつものパターン」を探し当てたい。

その方法を次に説明したい。

「いつものパターン」に気づく方法
つまり
ゲシュタルトを閉じる力を育てる方法

それは、一つの出来事について能動的に思考することだ。

具体的な方法としては、「なぜ?」を考え続けることだ。

例えば
「彼が返信しなかった」

このときに
 なぜ返信しなかったのだろう
 その前には何が起きていたのだろう
 以前にも同じことが起きていなかっただろうか
 今まで、どんな時に同じパターンになったのか
 その時私はどういう状態だっただろうか
 私が余裕のない時期だったのではないか

と、掘り下げて能動的に思考していくのだ。

そして一つの出来事だけではなく、複数の出来事を並べてみてほしい。

すると、
「彼は返信しない人」なのではなく、彼が返信しなくなる条件が見えてくることがある。

返信が来なくなった。
 ↓
なぜ?
 ↓
彼は「一人で考えたい」と言っていた。
 ↓
その時、私はどうした?
 ↓
「わかった」と返事をしながら、本当は毎日連絡したかった
 ↓
なぜ、私は本音を言わなかった?
 ↓
嫌われるのが怖かったから。
 ↓
なぜ、嫌われることがそんなに怖かった?
 ↓
「相手に合わせる人のほうが愛される」と思っていたから。
 ↓
つまり
問題は返信ではなく、「いい子をやめられない」という私のパターンだった。

と、ここまで見えてくると、「彼から連絡が来ない」という悩みは、LINEを分析する問題ではなく、二人の関係の構造を理解する問題へと変わる。

私のカウンセリングでは、その構造を一緒に探していく。

目的は、今回の恋愛だけを解決することではない。
同じ恋愛パターンを繰り返さないための構造を理解し、次の恋愛でも同じ悩みを抱えにくくすることである。

ゲシュタルトが開いてしまっていると、決断や手放しは難しい。

まず
決断できない状態とは、複数のゲシュタルトが同時に存在している状態のことだ。

彼から連絡が来なくなったとき、
A「まだ好き」
B「もう諦めたほうがいい」
C「忙しいだけかもしれない」
D「でも、本当に大切なら連絡してくるはず」

これらが統合されていないため、頭の中では延々と会議が続く。

逆に、決断できる人は、これらすべてを見た上で、「私はこの考え方を選ぶ」と、複数の思いを一つの意味へ統合できる。

手放せないのも同様の状況である。

手放せない状態とは、経験が断片化している状態で、複数の思いを一つの意味として統合できていない状態だ。

例えば、

 振られた
 LINEが来ない
 でも優しかった
 まだ好き

これらがすべて独立した情報として頭の中に残っているため、「まだ考え続けなければ」と脳は判断する。

ゲシュタルト的に言えば、手放しとは感情がなくなることではない。
その出来事が、人生全体の中で適切な位置づけを得ることである。

それができれば、後悔があっても人生の一部として抱えられる。

これは感情を消したのではない。
その出来事に自分なりの意味を見つけ、自分の人生の一つの経験として受け入れられた結果なのである。

決断や手放しができない段階では、出来事を点で見ている。

一方、決断や手放しができるときには、「この経験にはこういう意味があった」と自分なりの答えを持てているのである。

わかりやすい例として提示したいのが、
加藤ミリヤの『WHY』という曲のサビの歌詞だ。

この曲は、サビで「どうして?」を何度も問い続けているのだ。
 どうして私を責めるの〜
 どうして私を裏切るの〜

大事なのは、「どうして?」を増やすことではなく、「つまり何だったのか」までたどり着くことだ。

ところが徐々に

 彼女は誰なの〜
 お願い私を捨てないで〜

と、どんどん感情に飲み込まれていく。(歌詞だからいいんだよと。その通りですと。)

最後は

大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い
ばかみたい

で終わる。
感情に飲まれてしまっており、これだとゲシュタルトは閉じられていない。

私はこの歌詞を批判したいのではない。
私が言いたいのは、

「つまり何だったのか」にたどり着くまでに、感情に飲まれてしまっては、ゲシュタルトは閉じない。

このことに注意してほしいのだ。

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